FUJITA BOOKSTORE

藤田 書店 の おすすめ本

トップ > poem > 室生犀星 > 初めて「カラマゾフ兄弟」を読んだ晩のこと




「初めて「カラマゾフ兄弟」を読んだ晩のこと」(室生犀星):藤田書店がおすすめする詩



私はふと心をすまして
その晩も椎しひの実が屋根の上に
時を置いて潑はじかれる音をきいた
まるで礫こいしを遠くから打つたやうに
侘わびしく雨戸をも叩たたくことがあつた
郊外の夜は靄もやが深く
しめりを帯びた庭の土の上に
かなり重い静かな音を立てて
椎の実は
ぽつりぽつりと落ちてきた
それは誰でも彼の実のおちる音を
かつて聞いたものがお互ひに感じるやうに
まるで人間の微かすかな足音のやうに
温かい静かなしかも内気な歩みで
あたりに忍んで来るもののやうであつた

私は書物を閉ぢて
雨戸を繰つて庭の靄を眺めた
温かい晩の靄は一つの生きもののやうに
その濡れた地と梢とにかかつてゐた
自分は彼の愛すべき孤独な小さな音響が
実に自然に、寂然として
目の前に落ちるのをきいてゐた

都会のはづれにある町の
しかも奥深い百姓家の離れの一室に
私は父を亡うしなつて
遠く郷里から帰つて坐つてゐた
あたかも自みずからがその生涯の央なかばに立つて
しかも「苦しんだ芸術」に
あとの生涯をゆだねつくさうと心に決めた
深い晩のことであつた



















   

FUJITA BOOKSTORE

藤田 書店 の おすすめ本

藤ふじ田た書しょ店てんのおすすすめ本 
   おすすめの詩し集しゅうはこれだ(詩集「傷つくは 優しんだ」(優しい愛の詩)(ルビつき))   アンチエイジングを科学する(寿命をのばす5つの方法 ー生命科学の最前線)   SEO(検索エンジン最適化)はこれだけ(SEOで検索エンジンもユーザーも味方に付けるホームページ改造術)   古文を味わいたいならこれだ(試験によく出る重要出典研究!! 土屋の古文100)   中学生が高校入試準備に英語を勉強するならこれだ(高校入試突破のための必須1300語)   小学生がはじめて英語を勉強するならこれだ(書いておぼえるはじめての英単語ピーナツ)   中原中也   「サーカス」(中原中也)   「春宵感懐」(中原中也)   「湖上」(中原中也)   「骨」(中原中也)   「雪の賦」(中原中也)   「汚れつちまつた悲しみに……」(中原中也)   「幻影」(中原中也)   「月夜の浜辺」(中原中也)   「一つのメルヘン」(中原中也)   「春日狂想」(中原中也)   佐藤春夫   「花のある杜」(佐藤春夫)   「水辺月夜の歌」(佐藤春夫)   「海辺の恋」(佐藤春夫)   「感傷肖像」(佐藤春夫)   「ためいき」(佐藤春夫)   「少年の日」(佐藤春夫)   「秋刀魚の歌」(佐藤春夫)   「浴泉消息」(佐藤春夫)   「しぐれに寄する抒情」(佐藤春夫)   「秋の女よ」(佐藤春夫)   「海の若者」(佐藤春夫)   「願ひ」(佐藤春夫)   「望郷五月歌」(佐藤春夫)   三好達治   「乳母車」(三好達治)   「雪」(三好達治)   「甃のうへ」(三好達治)   「湖水」(三好達治)   「僕は」(三好達治)   「一点鐘二点鐘」(三好達治)   「鴉」(三好達治)   室生犀星   「小景異情より」(室生犀星)   「寂しき春」(室生犀星)   「はる」(室生犀星)   「万人の孤独」(室生犀星)   「初めて「カラマゾフ兄弟」を読んだ晩のこと」(室生犀星)   「切なき思ひぞ知る」(室生犀星)     「こほろぎのうた」(室生犀星)   「紙」(室生犀星)   「野をうしろに色どつて」(室生犀星)   「昨日いらつしつて下さい」(室生犀星)   「老いたるえびのうた」(室生犀星)   藤田書店がおすすめする本   Q & A お客きゃく様さまからよくいただくお問とい合あわせ   特とく定てい商しょう取とり引ひき法ほうに関かんする表ひょう記き、プライバシーポリシー   お問とい合あわせ