「万人の孤独」(室生犀星):藤田書店がおすすめする詩
私はやはり内映を求めてゐた
涙そのもののやうに
深いやはらかい空気を求愛してゐた
へり下つて熱い端厳な言葉で
充ち溢るる感謝を用意して
まじめなこの世の
その万人の孤独から
しんみりと与へられるものを求めてゐた
遠いやうで心たかまる
永久の女性を求めてゐた
ある日は小鳥のやうに
ある日はうち沈んだ花のやうにしてゐた
その花の開ききるまで
匂ひ放つまで永いはるを吾等は待つてゐた
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