「少年の日」(佐藤春夫):藤田書店がおすすめする詩
1 春
野ゆき山ゆき海辺ゆき
真ひるの丘べ花を藉き
つぶら瞳の君ゆゑに
うれひは青し空よりも。
2 夏
蔭おほき林をたどり
夢ふかきみ瞳を恋ひ
なやましき真昼の丘べ
さしぐまる、赤き花にも。
3 秋
君が瞳はつぶらにて
君が心は知りがたし
君をはなれて唯ひとり
月夜の海に石を投ぐ。
4 冬
君は夜な夜な毛糸あむ
銀の編み棒にあむ糸は
かぐろなる糸あかき糸
そのラムプ敷き誰がものぞ。
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